先日何気なくテレビを見ていたら、スイスのツェルマットが映った。十五年ほど前になろうか、妻と共にツアー旅行に参加し、訪れた事があった。電気自動車しか走れない町、マッターホルンの登り口の町。町というより村という方がピッタリの小さな花の多い所であった。「マッターホルンに出会う。」私の夢の一つであった。あの三角形の異様な形の山に出会うのが・・・・・。しかし十回行って十回とも見られなかったという人がいるくらい、いつも雲をかぶっている山でもあった。夕方ホテルに到着。七時からディナー。二時間ほど自由時間。それでは少し散歩でもしようかと、二人で町の奥の方へ細い道をゆっくり登って行った。曲がりくねっていた道が突然開けた。そしてそこには紛れもなく夕日に輝くマッターホルンの神々しいまでの姿がドーンと・・・・・。明日見に行くはずだった。見る事が出来ないかもしれないと思っていたマッターホルン。言葉が出なかった。ただ五分ほど呆然と立ちつくした。背中がブルブルと震えるのがわかった。二人とも無言。興奮さめやらずホテルへ。七時にホテルのレストランへ。「あれどうしたんだろう停電かな?」明かりが消えていてボーッとしか見えない。とその時、一斉に明かりがついて「ハッピーバースデイ」の大合唱。妻のテーブルの上にはバースイディケーキ。最高のバースデイになった。