オークランドのレミュエラという所に家があった。岡の上に建築されていて、その眺望は一日中見ていても飽きる事がなかった。正面に海、その中央部に真黒く火山島である、ランギトット島、家から海までは車で五分程、途中には、所々昔のイギリス風の集落というか、家が建ち、周りは木々の緑、そして沢山の花々、日の出から日の入りまで、空の色がそれこそ七色に変わって行く。その景色をゆったりとした気持ちで眺めながら、楽しい会話、食事。こんな時間の過ごし方があったんだなあと。私の親友K君も十日ほど滞在してくれたのだが、もう帰りたくない、ずっとここにいたいと。「日本では忙し過ぎたな、司郎、これが本当の人生というものだよな、あと五年したら引退するから、ここで司郎と一緒に生活したいなあ。」その二年後K君は遠い所へ旅立ってしまった。「もう一度連れて行ってあげれば良かった」のか、十五年たった今でも、その時のうれしそうなK君の顔が忘れられない。事業拡大、拡大の果ての過労死、無二の親友だったのに。