書道を習い出して、もう十五年近くなる。ゴルフに勝つ為に集中力をつけるという、妻のアドバイスで始めた。夫婦で机を並べて二年ほどはやっていたのであるが、私がその教室に定着するのを見届けると、妻はさっさとやめて行った。私達の後の席にいた若いお嬢さんに、「お習字が終わった後は司郎さんと一緒に食事をしてあげて」と、私を彼女に託した。私の言い分など全く聞く必要もないほどの美しいお嬢さんであった。後年私たちの実の娘のようになるのであるが、妻の作戦にマンマとはまり、私は別な楽しみもあってせっせと教室に通う事になる。
しかし、大変な世界に入ってしまったと思った。古い習慣が敢然と残っていた。とにかくむずかしい、思うように書けない。又年がら年中出品する為に、次から次へと作品を書かなければならない。早朝や、土曜日をその時間に当てるのであるが、十五年もやっていると、もうそれも習慣化されてきて、生活の一部になっている。最近では、私のとっての一番の「寛ぎ」の時であり「無」の時間でもある。習字での娘も今はもう二人の子のお母さんである。結婚式にも夫婦で招待され、本当のご両親から「東京のパパ、ママと言って慕っておりました、本当にお世話になり、ありがとうございました」と、もうあれから十年ですか。